INTERVIEW#02 旬彩弁当すのろく ブランディング

はじめに

こんにちは!新海です。

今回のお客様インタビュー2回目は旬彩弁当すのろく様です。

すのろく様は、ごりあてという日本料理のお店からの業態変更という形で、2024年に松本市にてオープンされたお弁当屋さん。


お店のコンセプト設計から携わらせていただいたプロジェクトを、代表の谷川様と共に振り返っていきます!

谷川さんが料理人を志すまで

谷川さん:26歳の頃に料理人になり、現在で20年ほど経ちます。志したきっかけは家族が病気に罹り、食事に対しての意識が変わったことと、海外旅行中に様々な食べ物を口にしてきて、日本料理の美味しさを改めて知ったことです。それまでは、「食べることは好き」でしたが、「作ろう」とは思っていませんでした。ただ、中学を卒業してから寮生活だったので、自炊をする機会は多く、段々と料理が面白くなっていく感覚はありましたね。

代表の谷川智行さん

新海:技術はどのように身につけられたのでしょうか?

谷川さん:思い立ったら行動が早いので、調理師免許を取得するために専門学校へ通い、卒業後は東京の料理店で修行を重ねてきました。下積み時代はオープニングスタッフからのスタートでしたので、時間的にも、体力的にもそれはそれは大変でした。


お弁当屋を選んだ理由

新海:料理人にはジャンルが多種ある中で、お弁当屋という業態を選ばれた理由はありますか?

谷川さん:選んだ修行先がデパートの「高島屋」「伊勢丹」にお弁当を卸していて。後の独立店舗「ごりあて」の様な、夜営業と兼ねているスタイルだったんです。なので、自然と「料理人になる=お弁当を作る」という頭になっていましたね。

新海:修行先に影響を受けてということだったのですね。その後、ごりあてさんを開かれたのはお幾つの頃ですか。

谷川さん:33、4歳の頃です。

最初は長野県で職を探したのですが、自分のやりたい方向性のお店がなく、「だったら自分でつくろう!」とスタートしました。お弁当の事業は軌道に乗るのは早かったです。スタッフも有難いことに知人の紹介などで集まり、苦労も乗り越えてこられました。その後、コロナ禍でロックダウンとなり、外食よりも在宅での食事がクローズアップされ始めた頃、「あ〜こういう時代も来るんだなあ」と時代に合わせて「お弁当一本」へ業態変更しました。「お酒が出なくなる」ということもあり、柔軟に仕事をしていかなければならないなと決意しました。



ご依頼のきっかけ

新海:MAG MAGとのご縁はどの様に生まれたのでしょうか?

谷川さん: 今回のすのろくでお世話になったカメラマンの相澤さんと知り合いで、紹介していただいたのが最初ですね。「楽しい職場だし、谷川さんに合うんじゃないかな」ということで一度お話を聞いてみようと思いました。実際にお会いした際、皆さん楽しくお仕事をされているという印象で、僕の中で波長が合う感覚で嬉しかった覚えがあります。

新海:MAG MAGの皆さんは、反対にいかがでしたか?

三井:私も全く同じ印象で、会話を重ねる中で、趣味も合いますし、フィーリングが合うといいますか、直感で共にいいものが作れそうだなと思いました。

福田:気さくで、いつも場を和ませてくださる印象で、こちらも救われていました。

谷川:ありがとうございます。経営者である反面、現場にいるプレイヤーの時間が長いので、お願いするなら丸っきり新しい方にと思っていました。そして「自分は一切Noと言わない、第三者の目線を大切に」というチャレンジ精神でお願いさせていただきました。なので、多くを語らずともこちらの意図を汲んで組み立ててくださるMAG MAGさんに出会えてよかったです。

三井、福田、新海:ありがとうございます!

“すのろく”ができるまで

新海:続いて制作側の皆さん。すのろくという店名やデザインが出来上がるまでのストーリーを教えてください。

三井:ごりあてさんは以前から有名店なので存じ上げておりました。プロジェクト開始にあたって、谷川さんの人となりを知りたくて一度お話を伺いました。その際、「ごりあて」の名前をそのまま活かすかどうかも含め、スタッフと谷川さんと作戦会議を開きました。谷川さんが持ってきてくれた手書きのノートを元に話を進めたのですが、私も手書きが好きなので、そのメモから感じた谷川さんの人柄に共感しました。

食材の冷凍方法やロスを減らす取り組みも興味深く、谷川さんの考え方に感動しました。実際にお弁当をいただいた際も、食材の色鮮やかさ、美味しさに感動したと同時に、余計なことを施さない、シンプルだけれど心のこもった思いが伝わってきて。私も同じ気持ちで制作していきたいと思いました。

福田:その会議では、お客様がどの様にお弁当と接点を持つのだろうと、シーンやステップごとに模造紙にアイデア出しを行いました。谷川さんをはじめ、弊社スタッフ全員で取り組んだことで、さまざまな視点からペルソナや行動がイメージでき、「こういうお客様に」「こういう形で届けたい」という道筋がはっきりしていきました。こちらが実際に使用した模造紙です。

三井:そちらを踏まえてまずは、屋号を考えました。4案ほど出し、今と未来にふさわしい名前を選んでいただき、そこからビジュアルデザインに落とし込んでいった流れです。

谷川さん:4案ともビビッときたのですが、ここはいい意味で迷いました。「寧(ねい)」「ましらう」「まて」、そして「すのろく」。名前には一番楽しみがあったので、ここは唯一悩んだところです。平仮名の優しさや、うちの良さである「無添加」「非機械的」な雰囲気が文字で伝わるのがすのろくでした。

新海:改めて「すのろく」の意味をお聞きしてもよろしいでしょうか?

三井:「すのろく」という名前は分解すると「素」の「禄」になります。「素」には「無添加」や「無着色」、日本料理特有の「素材本来の味を引き出す」という意味が込められています。一方で、「禄」は神様からの贈り物、また昔の給与「俸禄」を連想させる言葉で、食物が大地からの贈り物であることを示しています。谷川さんが食材を大切に扱う姿勢とも重なり、非常に合っていると感じました。

さらに、「すのろく」を後ろから読むと「くろのす」になります。これはギリシャ神話の農耕の神様の名前。料理における隠し包丁のように、さり気なく、でも強い意味を持つ名前を考えました。

谷川さん:お客様にも意味を聞かれた時に「素の食材を大切にいただくこと」という風に一言でコンセプトを伝えられるので気に入っています。ごりあてが5、すのろくで6、次にお願いするときは… 7ですね(笑)三井さんなら暗黙で入れてくれると信じてます!

三井:もちろんです!その際はよろしくお願いします!

ビジュアルへの落とし込み

新海:そして、ロゴを始めとするツールデザインへビジュアル化されていったわけですね。

三井: すのろくさんのロゴは、マークとロゴタイプを分けて提案させていただきました。様々なツールで展開できるよう、それぞれが単独でも成り立つデザインにしています。マークはメインではなく、家紋のような役割を担い、メインはロゴタイプです。それぞれの案の中から、谷川さんに最も納得いただけるものを選んでいただきました。

文字は毛筆風に仕上げ、日本食や手作り感を表現したいと思いましたが、同時にスタイリッシュで新しい挑戦を感じさせるデザインも大切にしました。古い書物の文字を参考にし、どのような筆運びが今回のイメージに合うかを考えました。古すぎず、新しすぎず、そのバランスを意識して作り上げました。

谷川さん:なんだか子供のアルバムを見ている様で、既に懐かしいですね(笑)ロゴに関しては、「遊び心」「楽しさ」という二つの視点を軸に決めました。僕のことを理解してくださっていて、堅苦しすぎず、「行き過ぎない遊び心」をうまく昇華してくださったんだなと感じます。 

決定したロゴ


三井:その他のツールについてですが、お弁当事業においては、どうしてもパッケージなど、消耗品が増えてしまいます。そのため、コストをできるだけ抑えて、お弁当の品質にもっと予算をかけてもらいたいという思いから、スタンプという、すのろくスタッフの皆さんの手を借りるスタイルに行き着きました。人の手が加わることで生まれる美しさを表現できたのではないかと思います。スタンプのかすれ具合や、押す位置のわずかな違いなどに、その魅力が現れていると思います。

谷川さん:スタンプは担当スタッフが押してくれるのですが、実は結構コツがあって、思ったよりも難しいんです。乾くまでに時間がかかるので、2〜3時間広げておくことになります。途中で「やっぱりプリントにする?」と提案したこともありましたが、従業員の方から「いえ、それはやめましょう!手作りの良さがあるし、このかすれ具合も、ずれてても味があるんです」と言ってもらい、三井さんの狙いがしっかり浸透していることを実感して嬉しかったです。今ではスタンプを押すスタッフもすごく慣れて、めちゃめちゃ早くなりました(笑)。下で作業の音を聞いていると、そのスピードがどんどん上がっていくんです。そのために生まれてきたかのような勢いです(笑)。小さな工程ですが、とても大切だなと思っています。

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デザインの反響

新海:その様な背景も聞けて、ますます嬉しいです!お店ができていく中で特に印象に残る瞬間はありますか?

谷川さん:やっぱり、外観に大きなロゴマークが付いた時ですね!スタートラインだなと思って嬉しかったです。あの通りにすごく映える色で、よく通行される方に「何のお店?」と尋ねられました。今でもお手洗い貸して!とよく言われます。入りやすいのかな…(笑)
関心を持っていただけているということなので、とても嬉しく感じます。

新海:福田さんは、プロジェクトの中で心に残る瞬間はありますか?

福田:谷川さんやスタッフがみんなで集まり、制作物のための撮影をした場面です。料理人、カメラマン、アートディレクター、Webディレクターのように、異なるバックグラウンドを持つ人たちが集まり、

知恵や工夫を持ち寄ってアイデアや想いをかたちにしていく工程は刺激的でした。これは制作の裏側になりますが、谷川さんがお料理をより鮮やかに映すための下ごしらえや、複数パターンを想定した道具の準備などを念入りにしてくださっていて。様々な現場で研鑽を積み実践を重ねてこられたからこその的確なディレクションを目の当たりにし、私自身も学ばせていただく点が多くありました。

新海:私も、本記事の撮影で同じことを感じました。谷川さんが積極的に制作側に携わってくださるので、とてもスムーズにより良いものが生まれていったのですよね。谷川さん、お客様からの反響はいかがでしたか?

谷川さん:ごりあて時代からのお客様がほとんど来てくださっているので、もう一度コンセプトをお伝えし直しました。お店は変わっても、根本は変わらないので。

新規のお客様では個人の方がほとんどです。路面に見えるスタイルの店舗になったことで、個人のお客様にはより認知を上げて、届けていきたいなと思っています。


今後へ向けて

新海:最後に、今後挑戦したいことはありますか?

谷川さん:お惣菜販売を予定しており、今年の夏頃から始めたいと思っています。週に半分、お昼から夜まで営業する予定です。お弁当だけだと、どうしても単調になりがちなので、10〜20種類のお惣菜をその都度提供し、路面店ならではの強みを活かしてアピールしていきたいと考えています。ガラス張りの店舗なので、宣伝効果にもなりますし、お弁当とはまた違ったおかずの選択肢を提供できるので、楽しんでもらえると思います!

また、私たちの活動の根底にある「人と人を笑顔でつなぐステーション」という思いを従業員と一緒に実現していきたいと思っています。将来的には、夜営業も視野に入れていきたいと考えています。


谷川様、スタッフの皆さまご協力ありがとうございました!

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デザイナー

新海咲子

SHINKAI SAKIKO

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