松本の渓流解禁日

解禁前の静かな準備

二月の松本は、まだまだ寒い。
でも、ほんの少しだけ空気が違う。
「春に向かってるな」と、体が先に気づく感じがする。

渓流釣りを趣味にしている私にとって、この時期は特別だ。
イワナやヤマメの解禁が近づくと、なぜだか落ち着かない。
ソワソワするのに、ワクワクもしている。
釣り人というのは、だいたいそういう生き物だと思う。

川へ行きたい気持ちを抑えながら、今日は部屋でリールと向き合う。
アブガルシアのカーディナル3。
長年使っている、お気に入りだ。

分解して、洗って、グリスを塗り直して、また組み上げる。
ただの整備のはずなのに、やっていると気持ちが整ってくる。
不思議だ。

リールは、釣り道具だけど、
釣り人にとっては「気持ちのスイッチ」でもあるのかもしれない。

単純な構造だけど、だからこそ愛らしい。

松本市という恵まれたフィールド

松本市は渓流が近い。
これって、けっこうすごいことだと思う。

車で少し走れば、渓流魚が棲む川がある。
そしてその川は、ただの「釣り場」じゃない。
季節がそのまま流れている場所だ。

春の光。
夏の影。
秋の匂い。
冬の静けさ。

同じ川なのに、毎回ちがう。
たぶん、釣りをしているというより、
「川を見に行っている」時間も多い。

魚が釣れると嬉しい。
でも釣れなくても、川に立っているだけで満たされる日がある。
これもまた、渓流釣りの不思議なところだ。

ハイシーズン中の山間渓流

変わりゆく川の現実

ただ、最近は川に立つと、少し考えてしまう。
「魚、減ったな」と。

もちろん自然のことだから、年によって違う。
そう分かっていても、
それでも、ここ数年の変化ははっきり感じる。

河川工事、護岸整備、環境の変化。
必要なことなのかもしれない。
安全のためでもある。

でも、釣り人の目線で見ると、
「あの淵が浅くなったな」とか、
「この流れ、変わったな」とか、
そういう小さな変化が積み重なって見えてくる。

昔は反応があったポイントが静かなままだったりする。
ルアーを通しても、なにも起きない。
水面はきれいで、流れもきれいなのに、
なぜだか物足りない。

魚がいない川は、川だけど、
ちょっと「川じゃない」感じもする。

この感覚は、うまく言葉にしにくいけれど、
たぶん、釣り人なら分かると思う。

それでも川に立つ理由、そして今日

整備が終わったカーディナル3を手に取る。
回してみる。
いい感じだ。

釣りは、自然を相手にしている。
だから思い通りにならない。
それでも、行きたくなる。

魚が減ったから釣りをやめる、というより、
魚が減ったからこそ、
川を見続けたい気持ちが強くなっている気がする。

渓流釣りは、獲る遊びではなく、
自然の今を体で受け取る遊びなのかもしれない。

そして今日。
いよいよ解禁日だ。

今年もまた、松本の渓流に立つ。
魚に出会えるかどうかは分からない。
でも、一投目を投げる瞬間だけは、毎年変わらず特別だ。

「今年も、ここに来たな」
そう思えるだけで、もう半分くらい満たされている。

カーディナル3と一緒に、
今年の川の声を聞きに行こうと思う。

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デザイナー

三井則文

MITSUI NORIFUMI

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